未来共創センター オープン・プロジェクトとは、学系間および他部局との協働を推進し、本研究化と社会の結節点としての社学共創活動を展開することにより、共生社会実現に向けての実践的な教育活動を図るために設置されました。人間科学研究科内に社会との多様な結び目をつくり、あたらしい場を創っていくことを目指しています。

  • Ethnography Lab 森田敦郎

     大阪大学のEthnography Labは、フィールドワークと質的研究の教育・研究、国際交流を目的として人間科学研究科に設置された組織です。エスノグラフィの体系的な教育体制を整備するとともに、デザイン、エンジニアリング、ビジネス、社会的企業などとのコラボレーションを行っています。

  • 災害ボランティアラボ 渥美公秀


     今回の新型コロナウイルスでは、地域活動で一番大切な人と人のふれあいや交流の機会が制限され、サロン活動や交流イベントなど、これまであたり前に行っていた活動すべてが難しい状況となりました。災害時の対応や防災の取り組みについても、人が集まること自体が禁止や注意を払う必要があります。コロナと共存していくために、コロナに対する正しい知識の習得や備えをしていくことはもちろん必要ですが、人と人とのつながりをもてるような新しい活動スタイルを模索し継続していくことも大切です。災害ボランティアラボでは、コロナと自然災害との複合災害も視野に入れた準備なども並行して行っています。

  • 心理・行動フォーサイトラボ PBL-F 三浦麻子

     「心理・行動フォーサイトラボ PBL-F」は、心理学・行動科学を方法論として社会的文脈における人間の心理と行動のメカニズム(インサイト)の解明とその変容の方法、すなわち能動的な将来予測である「フォーサイト」を明らかとするための共創的研究プロジェクトを推進します。さらに、将来的には学外の企業・団体をラボパートナーとして、研究成果に基づき、製品開発・社会実装・普及のためのコンセプトを開発することを目指します。またこれらの共創的研究プロジェクトの実施を本学の学部生・大学院生のPBLの場とすることで、心理・行動科学の方法論の社会応用の過程を体験的に学ぶ機会を提供します。

  • 子どもの安全ラボ 中井 宏


     子どもの安全ラボでは、子どもの不慮の事故を減らすための実験・調査と、その成果をもとにした教材開発を目指します。親子で過ごす日常生活に自然と取り入れられる教育ツール(絵本やカルタ、動画など)の作成や、教諭・保育士による学校等(主に幼・保・小)での安全教育の普及に資する実践的研究に取り組んでいます。
     今年度は、これまでに開発した安全教育プログラムを多くの幼稚園・保育所・小学校に普及するためのスキーム作りや、学校で安全教育を実施する際の効果評価方法の検討にも取り組みます。

  • 老いと死の研究ラボ 権藤恭之


     老いと死のラボでは、これまでの個人の加齢を中心としたエイジング研究だけでなく、地域におけるエイジング、特に自治体の健康福祉、高齢者施策に応用可能な、地域や組織そのものの加齢とさらに死のプロセスを考慮したエイジングモデルの構築を目指す。また、これまでディスプリンに縛られエイジングという現象の狭い側面に注目しがちであった教育に関しても、幅広い視点で現象を捉えることができる、研究、教育、そして実践者を養成可能な部局をまたいだカリキュラムの構築を目指す。

  • 緒方らぼ 川端 亮

    緒方らぼは一般社団法人NEOのむらとして活動しています。 NEOのむらのホームページはこちら

    銘酒「緒方洪庵」造って飲んで広げて復興支援 第3弾(PDF)

     緒方らぼは、野村地域自治振興協議会、愛媛大学社会共創学部とOOS協定を結び、3者の協力の下で活動する、教育・研究・地域貢献プロジェクトです。2018年7月の西日本豪雨で被災した愛媛県西予市野村町の復興まちづくりを目的とし、野村町の旧緒方酒造の本家緒方の蔵を拠点として活動しています。活動は主に3つあり、第一には、旧緒方酒造の日本酒「緒方洪庵」を引き継ぎ、その販売によって野村町を多くの人に知ってもらう活動です。第二は、2021年から愛媛県が主催した「えひめ南予きずな博」の一部として始まった「がいなんよ大学 in のむら」の実施です。これは講演会やSNSによるまちの魅力の発信、酒粕を使った新たなメニューの開発等を実施しています。第三に、これらの活動に大学生を幹部として参加させ、イベントの企画・運営のほか、地域の高校生との交流による地域の若者の力の活性化・向上を目指してきました。そして、それらの経過を記録し分析しています。

  • 哲学の実験オープンラボ 野尻 英一

     「哲学の実験オープンラボ」は、阪大人科の擁する学リソースを集約し、「見える化」することをコンセプトとします。人科の国際性、学際性、実践性を備えた「哲学知」を社会に向けて開き、提供していきます。
     今年は設立三年目となります。これまで大型メタバースイベント、国際パネルディスカッション、学生が主体となった各種研究会、障害をテーマとした座談会、地域との交流スペース構築、企業と連携したインターンシップ企画、哲学をテーマにしたネットラジオ放送などを行ってきました。登録メンバーは120名を超えました。
     これまでは人科内での連携に力を入れていましたが、他学部、他研究からの参加も増えつつあり、今後は、地域、社会に開いたラボを目指します。

  • 地域の食とプラネタリーヘルス 木村 友美

     本プロジェクトは、地域に根ざした食の探究を通じて、人と環境の双方の「健康」を目指すプラネタリーヘルスの実践にむけた学びと発信を、地域の人々と共に行うものです。地域創生において、食は重要なテーマの一つであり、「食で地域を元気に」というスローガンも聞かれます。食が人の健康だけでなく、地域・環境を健康にするという考えは、人と地球環境の健康を切り離さずに考えるプラネタリーヘルスの概念にも通ずるものです。
     本プロジェクトではまず、瀬戸内地域をフィールドとし、地域団体による食と地域創生の実践や、地域に暮らす高齢者の食実践から学びあうフィールドワークおよび研究会を実施します。
     地域固有の食文化や伝統知を、地域の人々と共に学び合うことからプラネタリーヘルスの実践につなげたいと考えています。

  • 全国人間科学系部局の連携と活動継続化 渥美 公秀


     大阪大学人間科学部は、我が国初の人間科学部として1972年に創設されました。今や全国に40を超える人間科学系部局があり、昨年の創立50周年式典には多くの部局長の皆様にご参加頂きました。そこで人間科学宣言を採択するとともに全国人間科学系部局連携ネットワークが立ち上がりました。このプロジェクトでは、全国の人間科学系部局との連携をさらに拡充するとともに、設立間もない全国ネットワークの活動が継続していくように運営を軌道に乗せることを目的に活動しています。

  • 縮退社会ラボ 村田 忠彦(情報科学研究科)


     縮退社会ラボでは、現代社会を成長発展社会と捉えるのではなく、少子高齢過疎化など縮退を余儀なくされている社会ー縮退社会ーと捉え、「尊厳ある縮退」をキーワードとして、縮退社会におけるコミュニティの変容過程、および、住民や社会の縮退に対する受容過程を検討し、尊厳ある縮退を実現するための実践的方略を導出します。尊厳ある縮退同好会を拠点として、先行研究を基にした概念整理、事例収集、過疎地、および、都市部の人口減少地域へのフィールドワーク、人口シミュレーションなどを実施していきます。
     これまでの研究会では、各構成員の研究内容の相互理解を深めつつ、「尊厳死」に関する講演も企画し、「尊厳」とは何かをテーマに議論を深めています。

  • 災間社会ラボ 宮本 匠

    一般社団法人おもやい

     災害が忘れたころにやってくるのではなく、毎年のように災害が起きるような「災間(さいかん)」の時代に、どのようにして尊厳を失わず生きていくことができるのかについて、実際の被災地での実践から考えていこうというプロジェクトです。主な現場は、佐賀県武雄市。2019年、2021年と続けて同じ地域が水害にみまわれました。そこで、有志の人々がゆるやかに集まり、「おもやい」という組織のようで組織でない、ひとびとが交差する場を拠点として、「支援」というより同じ地域に住む人間どうしの支えあい、「おせっかい」をかけあっています。災害が、頻発化、激甚化、広域化する中で、「経験」や「専門知識」をもった人々や「支援物資」が被災地外からたくさん集まってくるというこれまでの災害対応の形に限界が生じつつあります。この困難な時代を、それでも豊かに生きていくためのヒントを被災地から学びたいと思っています。

  • みんなのフィールドエソロジーラボ 山田 一憲


     動物、研究者、学生、一般来園者が、野猿公苑や動物園をフィールドとして交わることで、それぞれが「新しい役割」で他者と接することを目指す。大学実験室で研究をする研究者をフィールドに招いて、フィールドで実験をしてもらう。その実験の様子を来園者が見学できるかたちにすることで、研究に取り組む姿を「展示物」にする。学生はフィールドで「先生」になる。行動観察法を教えるイベントや、行動学、比較認知科学、自然人類学などの最前線を伝える講義を開催することで「教えながら学ぶ」。フィールドを訪れる一般来園者は「学生」や「研究者」になる。上述の講義を受講した来園者にはそれぞれ受講証を発行する。所定のコースを受講した一般来園者にはライセンスを発行し、研究グループの一員となり学生や研究者が行う実験や観察を研究補助者として一緒に行うことを認める。学術的側面にさらに強い興味をもつ一般来園者や他大学の学生であれば、本プロジェクトは「リカレント教育やインターン受け入れ」としての側面を持つ。大学院進学や人手不足で悩むフィールドでの人材確保につなげる。野猿公苑や動物園は「動物の行動と暮らしを学び、解明する学術の場」を来園者に提供できる。山田が開発してきた「サルメガネ」の技術を、一般来園者に提供することで、1頭1頭異なるサルの個性に接しながら、サルとの新しい関わり方を体験することができる。以上の試みが有機的に繋がったとき、フィールドの動物はただの展示物ではなくなる。科学研究、科学教育、観光資源として、その個性を尊重し敬意を持って関わる「共生のパートナー」となることで、動物と人間の新しい関係性がこのフィールドから切り拓かれると考える。

  • 記憶の継承を祈念するグローバル・ダイアログ(記憶の継承ラボ) 三好 恵真子

     終わりの見えないウクライナ侵攻とその後の混迷が続く昨今、常に戦いの犠牲となるのは、日常を生きる市井の人々であることを思い知ることになりました。かつて太平洋戦争の分岐点となった、ミッドウェー海戦による戦死者の足跡を辿り直した作家の澤地久枝氏が残した言葉(本プロジェクトの概念図に記載)は、見過ごされてきた戦争・戦後体験に目を向けてゆくべき必要性を、今まさに私たちにも語りかけるかのように胸に迫ります。アジア・太平洋戦争の終結から70数年が経つ現在、日常から戦争体験者がいなくなってゆく中で、いかにその体験や記憶を継承出来るのかについて、「ポスト体験時代」を生きる私たち一人ひとりに問われていることを意識する必要があるのではないでしょうか。
     そこで本プロジェクトでは、長崎、沖縄、福島、水俣など各地において日々平和活動に尽力されている現場の人々との交流活動を通じて、特に次世代を担う学生たちの主体性に期待しながら、戦争・戦後体験の意味を問い、未来への展望を描いていくために、国境を越えた対話(グローバル・ダイアログ)と連帯への可能性を生活の次元から模索することを目指していきます。

  • プロジェクトSOUP(Share Our Unique Perspectives) 安元 佐織


     「プロジェクトSOUP」は、人間科学研究科の学生に部局内外での多文化交流の場を提供することで、学内での学びと社会を繋ぐPublic Sociology(公共社会学)の実現を目指しています。Public Sociologyとは、社会的課題についての議論を学者間や大学のような教育機関の中だけでするのではなく、一般の人々との対話を通して、解決策を考えようというアプローチです。多くの社会的課題は、その課題を見る人の視点によって解釈や評価が異なることから、課題の重要性や解決するためのアプローチに差異が生じると言われています。そのため、多文化共生社会を実現するためには、自分とは異なる視点を持つ人々と実際に対話する機会が持てるかどうかが大きな課題となります。そのような機会を提供するのが、「プロジェクトSOUP」です。

  • Tsunami DRR (Disaster Risk Reduction) Lab 杉本 めぐみ

     南海トラフ巨大地震津波の想定に対し、大阪大学の津波防災に貢献できる研究の知見を生かしたアウトリーチ活動を行い、大阪府や国連インドネシア支部(UNOCHA)とともに、府民や2004年スマトラ津波で被害を受けたインドネシアの防災のために協働して防災に生かす取り組みを行います。津波のリスクから地元の大阪府民をはじめ世界の人々のいのちと資産を守るための行動変容に結びつくよう取り組んでまいります。さらに、大阪府やSDGsの提唱している国連と連携することでグローバルでより大きな社会貢献に広がった活動を進めて参ります。

  • 対話で進めるディスアビリティ・インクルージョン 中井 好男

     人と人との間に生まれ、育まれる共生の実現を可能にするのは、ことばを用いた人々の活動です。しかし、ことばやことばの活動は時として共生の実現を阻害する障壁や障害をも生み出します。そこで、本プロジェクトでは、多様なことばを持つ人々の間に生まれる障壁や障害をディスアビリティと捉え、それを乗り越える、あるいはそれをクリエイティビティへと転換させる活動の機会を創出することによって、共生の実現を目指します。移住者や障害者、LGBTQの方々を覆うアンブレラタームとしてのダイバーシティという概念の背後にあるマイノリティやマジョリティという二項対立の枠を超えて、多様なことばを持つ人々との対話を行うことによって、それぞれの「生」を知るとともに、そのあいだを生きる人やそれを包摂する社会のあり方を考える多様な場を創出していきます。

  • 多様性の中のウェルビーイング 山田 陽子

     本プロジェクトでは、ウェルビーイングの多様性について他部局や一般市民の方との連携のもとに考えていきます。特に、職場の中のウェルビーイングについて、指定難病を罹患している方、性的少数者の方、障碍をお持ちの方とともに議論し、画一的でない「働く人」像を描きだすことを試みます。また、今年度は絵画やダンスパフォーマンス等のアートを通した障碍者雇用について考えるイベントを開催します。

  • 復興まちづくりラボー野田村 渥美 公秀

     東日本大震災の直後から、人間科学研究科の教員や学生は、津波によって甚大な被害を受けた岩手県野田村にご縁を得て多様な関わりを継続してきました。このプロジェクトでは、現在進行中の活動を含め、これまでの私たちの活動が野田村の人々にとってどのようなインパクトがあったのかということに改めて焦点を当てて検討することを目的としています。夏に院生たちとフィールドワークの基礎を現場で学ぶコミュニティラーニング、OOS協定によるユニークな村になるために講義と実習と演習を組み合わせて進めていく野田学、チーム北リアスとして他大学と連携した様々な活動、チーム北リアス写真班と映画を交えた活動、復興ラジオ局「のだむラジオ」(休止中)、OOS協定を介した地元工業高校の修学旅行、3月11日の追悼式・・・挙げればきりがないほどですが、さらにそれぞれ前後に企画、準備、運営、記録、反省などのために訪問を繰り返しています。もちろん論文にはしてきましたし、本も書いてきました。教育にも大いに取り込んでいます。では、私たちの活動は、野田村にとって、社会にとって、どんなインパクトがあったのでしょうか。様々な活動を継続しつつ、そのインパクトの表現方法を模索しているプロジェクトです。

  • 生野区における多文化まちづくり活動における社学共創プロジェクト
    ほんまなほ(COデザインセンター)


     大阪という地域には、歴史的にさまざまな地域から移り住み、それぞれ衣食住にかかわる文化と知恵を育んできたひとびとが暮らしています。このプロジェクトでは、多文化共生のまちづくりの拠点「いくのコーライブズパーク」を中心に、生野にかぎらず、大阪で暮らす異なる歴史・文化背景をもつひとたちが、セーフだとおもえる場でさまざまな表現活動をしながら、生きるための知恵をひびかせあう交差的な文化プログラムを、住民との協働をとおして実践します。

  • グローバルビレッジ・コミュニティ・プロジェクト(GCP) 稲場 圭信


     2020年10月にオープンする「大阪大学グローバルビレッジ津雲台(以下、GV)」は「留学生を含むあらゆる学生、教職員が同じ場所で生活し、活発なコミュニケーションを可能とする国際的生活環境を実現することにより、地域との交流を通じた人と人との新たなインタラクションを生み出す」ことを理念として掲げています。このインタラクションには、大阪大学構成員に加えて周辺地域住民およびGVの商業区画のテナントやサービス付き高齢者住宅・賃貸住宅入居者といった多様なアクターが参与することになります。これは地域との連携、新たな「場」の創出を掲げる未来共創センターにとって重要な拠点となります。そこで、これらの取り組みを推進するために、未来共創センター内に「グローバルビレッジ・コミュニティ・プロジェクト(GCP)」を設置しました。

  • MeWプロジェクト(月経をめぐるウェルビーイングの研究と実践) 杉田 映理


     本プロジェクトは、大阪大学ユネスコチェアの研究プロジェクトの1つで、メイン・コンセプトは Menstrual Wellbeing by/in Social Designです。略してMeW(ミュー)。たとえば《生理用品の無償提供用のディスペンサーがトイレ内にあること》といった小さな工夫をして社会をデザインすること で、月経のある人のウェルビーイングがちょっとだけ前進するかもしれない。そして、よりよい社会(未来)をデザインするた めには、月経をめぐるウェルビーイングが必要、つまり両者の関係は双方向の矢印で結ばれている、と本プロジェクトでは仮定しています。
     本研究では、トイレに設置可能なディスペンサーを開発し、ディスペンサーを設置してから生じる課題についても、モニタリングを実施します。また、ディスペンサーをひとつのきっかけに、生理用品にとどまらない月経をめぐる諸課題(ジェンダー平等、「生理の貧困」、避難所支援、多文化共生、環境と衛生、月経教育、タブーとプライバシ—など)について考えていきたいと思います。