学生インタビュー★

 

杉浦万正さん

共和メディカルグループ 代表取締役

 

インタビュアー:人間科学研究科博士後期課程 冨安皓行

 

 共和メディカルグループは、現在大阪大学が関与する「グローバルビレッジ津雲台」において事業を展開されていらっしゃっています。今回は共和メディカルグループ代表取締役の杉浦万正さんにインタビューを行い、主に「グローバルビレッジ津雲台」におけるグループの取り組みや、共創にかける想いについて伺いました。


写真 1 拙いインタビューに優しく答えてくださる杉浦さん

 

「グローバルビレッジ津雲台」における貴グループの役割は何ですか?

 共和メディカルグループはグローバルビレッジの中で4つの事業を運営させて頂いています。一つは「関西薬局」という地域に根差した薬局、二つ目が「日本のいいもの食堂ハレとケ」と併設の「hi-cheese」というケーキ店、三つ目がその人がその人らしく、その人が過ごしたい地域で過ごしていくためのサポートとしての訪問看護事業「あかり訪問看護ステーション」、最後は、地域の方々が、医療従事者へ気楽に相談できる場所を創る「みんなの保健室」事業です。それ以外にも「まちづくり協議会」の一員として、街全体をどのような形でより良くしていくかということを各社様、大阪大学と共に協議させて頂いております。

 

挙げられた4つの事業はどれも貴グループがこれまで培われてきた事業であるように思いますが、4つの事業を一緒に展開していくことは初めての取り組みではないかと思います。

 4つの事業を1つの場所に置いている利点は、たとえば同じ利用者さんが、複数のサービスを受けたとしても、僕らとしては同じ組織内ですので、スタッフ同士も気軽に相談しやすい環境で、利用者さんのお困り事も、いちはやく共有しやすくなります。また、利用者さんが毎回全部、ゼロから説明して頂くよりは、裏で僕らがサポートしあうことによって、利用者さんに対して色々なことを察して、より密にサポートできるという利点があります。

 それを実現したいと思っているのですけれども「言うは易く行うは難し」で、どうやって具現化していくかというのが課題だと思います。理想としてはやはりその人の居場所というか、杓子定規ではなく第二第三の家族になったつもりで、地域の方々と一住民、一事業者として末永いご近所付き合いをしたいと思っています。

 

「グローバルビレッジ津雲台」のみならず、貴グループは糖質オフスイーツや低グルテンスイーツの販売を始めとして、様々な先駆的な取り組みをされていらっしゃると思います。このような取り組みはどのような経緯でなされるようになったのですか?

 私たちのグループは在宅医療に積極的に取り組んでいます。それは病院から退院後、利用者さんが暮らす地域に出て高齢者や外出困難な方々のサポートをしていく事業です。事業として本格的に取り組むにあたって、初期の初期には、まず僕が在宅医の先生に在宅の現場に一緒に同行させて頂きながら、地域の問題を教えて頂きました。私たちのグループは、医薬品に関連する薬局や医薬品卸が主力事業なのですが、その時に在宅の現場で感じたことは、薬の問題も沢山あるけれども、それと同じ位に食の問題も大きいと感じました。

 たとえば僕がお伺いした先では、おじいちゃんとおばあちゃんが二人で過ごしていました。おばあちゃんは寝たきりで全く動けず、おじいちゃんが在宅介護をしていたのですが、食事の面では、おじいちゃんは唯一おかゆしか作れなくて、ですね。おじいちゃんが作ったおかゆを365日朝昼晩冷凍させながらずっとそればかり食べている、食べさせている、と。そういったご家庭は結構あるんです。他には糖尿病の患者さんで、孫が来てくれた時に、一度でいいから孫と一緒に同じ様なケーキを食べたいといった話がありました。これが糖質オフスイーツの開発のきっかけになりました。

 このように現場に行くと食の問題は非常に大きいとわかりました。それをきっかけに食のプロである管理栄養士の方を採用し、診療報酬や介護報酬が無くても、地域で困っているならまずやってみようということで食の事業に取り組んだのがきっかけです。のちに飲食店にまでつながっていきました。

 

「グローバルビレッジ津雲台」内で「日本のいいもの食堂ハレとケ」を運営されていると思います。手毬寿司やご飯の炊き方が選べるというのが印象的ですね。

 グローバルビレッジのキーワードは居場所作りなのですけれども、「日本のいいもの食堂ハレとケ」はサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)の一階にあるんです。高齢者の方々って社会的な接点がなくなり、孤独になりがちな傾向にあるんです。高齢者施設であれば、新しい場所に引っ越して来ていますので、なかなか馴染めなかったりするんですね。

 そのような中で、外との接点が食堂だったりするんです。今までの多くのサ高住の食堂は地域に開かれていないことが多く、外との接点がなくなりがちでした。そのため今回は、社会的な孤独を解消すべく、開かれた食堂をコンセプトに、社会との接点をそこで持てるような場所を創ろう。そのためにも「パジャマで来れない、おしゃれな食堂を創ろう!」と思いました。さらに、お住まいの高齢者の方が、家族や孫が会いに来た時に、自分のお店として自慢ができる食堂を創ろうと。そうすれば、結果として外との接点や家族との繋がりを創れますし、食堂を自分の居場所として好きになってくれると思ったのです。


写真 2 「日本のいいもの食堂ハレとケ」の手毬寿司。綺麗な見た目に気分が華やぐ

 

今までの話の中で、杉浦さんが居場所ということばを使っていらっしゃるのが印象的だったのですが、居場所について重要だと思うようになってきっかけはございますか?

 きっかけというよりは、私たちのグループの理念として「健康ルネッサンス 奉仕・刷新・自由」があります。ルネッサンスということばをイノベーションと捉えるならば、私たちの理念は、言い換えれば「健康という考え方をアップデートしたい」ということだと捉えているのです。これまでは健康という概念を、身体が病気で不自由な状態として捉えがちだったと思うのですが、これからの新しい健康の考え方は、身体のみならず心が健康で、たとえ病気が治らなくてもその病気と共存し、その人がその人らしく豊かに生きている状態を健康と呼ぶように変わってきているのだと思います。今までは患者さんに対して薬を処方する、身体的な痛みを取るということにだけフォーカスしていたのですが、健康をアップデートするという意味でも、社会的孤立に対してのアプローチとして、その人の拠り所や知っている存在になる居場所づくり。支え合う場所づくり。そういうことも含め、地域医療の活動を進めていきたいと思っています。

 

「グローバルビレッジ津雲台」の街づくりの取り組みについてどのような希望を持っていらっしゃいますか?

 目の前の目標は、地域住民に愛される街にしていきたい。そのためにも「街づくり協議会」への参画も含め、自分たちの個々の利益のことだけではなく、地域全体のことを考え、地域住民に愛されることで結果的に自分たちもやっていけるという善循環なモデルにしたいと思っています。願わくは、世界に発信できる街のモデルケースになったらと意欲的に考えているところです。

 「Nothing venture, Nothing gain」ということばを大切にされ、さまざまなことに積極的に挑戦される杉浦さん。OOS協定の持つ可能性について「研究機能や若い方の可能性を信じて、世の中を変えていくような大きな取り組みを考え、発信していけるような場所であってほしいこと。逆に僕らも刺激を貰えるような関係性を築けたら」と語ってくださいました。杉浦さんの話から「現場に赴き、感じることの大切さ」について再確認したように思います。今回は熱い話をどうもありがとうございました。

 

(文責:冨安皓行)


SDGsカテゴリー
  • 3すべての人に健康と福祉を
  • 11住み続けられるまちづくりを
  • 17パートナーシップで目標を達成しよう
大阪大学 人間科学研究科
未来共創センター
大阪大学
ページトップに戻る