REPORT 第二回共創知研究会 阪神・淡路大震災25年企画 災害ボランティアから見えてきた大切なこととは?

2019/12/20(Fri) - 16:25
 

REPORT

第二回共創知研究会


阪神・淡路大震災25年企画

災害ボランティアから見えてきた大切なこととは?

 

演者:

村井雅清 被災地NGO協働センター顧問
渥美公秀 未来共創センター副センター長

 

日時:2019年12月6日(金)15:00~17:00
場所:大阪大学人間科学研究科 インターナショナルカフェ
参加者:17人

第二回共創知研究会は阪神・淡路大震災25年企画として、この25年間災害救援ボランティアとして世界各地で活動されてきた村井雅清さんにお話いただきました。聞き手は同じくこの25年間ボランティア活動と研究に精力的に取り組んできた副センター長の渥美公秀教授です。

 

残念な25年だった

 村井さんと渥美教授は阪神・淡路大震災の「ボランティア元年」以降の25年を「残念だった」と評価します。両者が揃って懸念するのは中間支援組織と言われているJVOADのような、ボランティアを取りまとめる組織の在り様についてです。すでに今は内閣府も奨めている、あらゆる援助関係者が形成する協働型のボランティアセンターが求められているので、中間支援組織も変わらざるを得ない状況です。大切なのは被災者に寄り添い、被災者の抱えている課題と向き合うことであると、村井さんは言います。

 

被災者の懐に入り込むボランティア

 今の日本では被災地の社会福祉協議会が開設するボランティアセンターのボランティアコーディネーターを中心に組織化された災害ボランティア支援が行われているのが定型のようです。しかし、ボランティアコーディネーターは被災者が本当に求めていることに目を向け、耳を傾けるのではなく、ニーズ表ありきでボランティアを機械的に割り当てるようになってしまっている現状があると、村井さんと渥美教授は問題視しています。被災者の懐に入り込み、本当に困っていることや求めていることを理解すること、そしてピオ11世の提唱した補完性の原理に従って被災者の自由を尊重しながら支援していくこと、それがボランティア支援にとって大事なのです。

 

初心者もどんどん行けるように

 阪神・淡路大震災の際、多くがボランティア初心者でした。自分で考えて行動してきたころから活動を続けている村井さんは、近年流布している、初心者は現場を混乱させるから十分な準備もせずに被災地に行くべきではないという言説に強い危機感と憤りを覚えています。経験豊富でよく準備したボランティアだけが求められているわけではありません。十人十色の多様なボランティアが現地に入って、困っている人たちに会って、助けていけばよいのだと村井さんは言います。

 

共創について

 村井さんは専門家のボランティア化の必要性を繰り返し語ります。専門家としての役割にこもってしまうのではなく、ボランティアとして被災者に必要な行動が柔軟にできるようになることが求められています。ボランティアにとって一番大切なことは被災者と向き合って懐に飛び込み、共に語り合い、考えていくことです。銭湯に行くことや居酒屋で働くことのような市井の人々の本音が聞ける環境に親しむことこそが災害ボランティアのための最大のトレーニングであると村井さんは考えます。市井の暮らしとそこに現れる本音に向き合うこと、ここからが共創知が生まれてくると思います。ただし専門家によるある種の翻訳装置が不可欠ではないでしょうか。

(文責:織田和明)