REPORT ふくしまの復興の「今」を知る学習会を実施しました

2020/12/17(Fri) - 11:25
 

REPORT

ふくしまの復興の「今」を知る学習会を実施しました

 

 2020年11月13日(金)、大阪大学吹田キャンパスにて未来共創センター・大阪大学社会ソリューションイニシアティブ(SSI)主催のもと、ふくしまの復興の「今」を知る学習会を開催しました。学習会の様子を報告します。

 未来共創センターはこれまで東日本大震災の被災地支援・復興に関するさまざまな取り組みをしています。未来共創センター(未来共生プログラム)は2013年からコミュニティ・ラーニングという授業を設けて、宮城県気仙沼市・宮城県南三陸町・岩手県野田村においてフィールドワークを行い、現地の人たちとの交流を通して震災復興について学んでいます。また、昨年度より復興が長期化する原子力災害について学び、共に考える機会として「ふくしまスタディツアー」を実施しています。本年度も2020年11月19日~21日にかけて宮城県双葉町・富岡町でのフィールドワークを予定しています。

 本学習会は福島県企画調整部の佐藤安彦さんをお迎えし、福島第一原発事故における被災地の復興の現状を学びました。本学習会の参加者は対面・Zoom含め40名ほどで、学生たちの興味関心の高さが伺えました。

 佐藤さんは原発事故発生時の当時から現在の状況を、科学的なデータと両親の被災経験を含めながら分かりやすく説明してくださいました。現在の避難指示区域は除染作業により県面積の約2.4パーセントにまで減少し、農作物の放射性物質量は基準値を下回っているそうです。しかし人口が急減している現状があり、農作物の購入をためらう声はいまだ存在している、と社会的な課題を語ってくださいました。佐藤さんは私たちに原発被災地域の現在の動画を見せてくださいました。駅は再開し、東日本大震災・原子力災害伝承館や福島県復興祈念公園など新しい建物や公園の様子を観察することができますが、同時にいまだに倒壊しそうな家やバリケードで閉鎖された道路なども映っていたのが印象的でした。

 佐藤さんはふくしまの持つ可能性について述べました。現在ふくしまは多くの企業と「共働」しているといいます。例えばふくしまは多くのIT企業と「共働」のもと、地域の特産品を売るためのオンラインストアを開いています。また現在多くの大学生がインターンシップを行い、ユニークな事業を行う起業家たちも集まってきている、といいます。佐藤さんはその例として三人の起業家の事例を紹介されました。佐藤さんは、現在の新型コロナウイルスにより社会のひずみが露呈したといいます。これから目指すべき「複層的な社会」の一つの可能性を模索する場として、ふくしまの可能性を述べました。

 佐藤さんの熱意のこもった話に触発され、学生たちは積極的に質問を投げかけていました。質問は「中間貯蔵施設や最終処分場の問題について、地域住民とどのような話をしているのか」、「原発における汚染水の問題に対して地域住民にどのような説明を行ったのか」など行政による市民への説明責任や働きかけに関するものだけでなく、「東日本大震災発生時、佐藤さんは原発に対してどのようなことを思ったのか」などの個人的な質問も含まれています。これらの一つ一つの質問に対して丁寧に返答する佐藤さんの姿が印象的でした。

  本学習会はふくしまの現状の一端を知るよい機会になりました。とりわけふくしまにおける除染作業や原発の現状について、私たちの多くは知らないのではないでしょうか。佐藤さんは県外の人びとにふくしまの現状を知ってもらうことの重要性を強調されています。私たちは本学習会で得た知識から何を考え、どのような行動・行為を起こしていけるでしょうか。11月19日~21日にかけて9名の学生たちが実際にふくしまを訪れます。事前の学びと現地を訪れる中で、学生たちが何を感じ・何を考えるのか知りたい、と強く感じました。

 


写真1. 佐藤さんの話を熱心に聞く学生


写真2. 質問を投げかける学生

 


(冨安皓行)