REPORT ふくしまスタディツアー2020報告会を実施しました

2021/02/03(Fri) - 14:15
 

REPORT

ふくしまスタディツアー2020報告会を実施しました

 

 2020年12月23日、未来共創センター(未来共生プログラム・災害ボランティアラボ)、大阪大学社会ソリューションイニシアティブ(SSI)主催、日本福祉のまちづくり学会災害研究・支援委員会共催のもとふくしまスタディツアー2020報告会が開催されました。

 未来共創センター、大阪大学社会ソリューションイニシアティブ(SSI)は2020年11月19日から21日にかけてふくしまスタディツアーを実施しました。ツアーの目的は実際にふくしまを訪れることを通して、被災地の「今」を知り、被災者の「今」を聴くなかで原子力災害後を共に生きる私たちがいかにあるべきかについて考えることでした。

 ツアーの参加者は人間科学部、経済学部、文学部、法学部、人間科学研究科などの学部・研究科に所属する9名の学生たちでした。本報告会はツアーに参加した学生の発表とその発表を基にしたディスカッションからなり、学生や教員、実際に現地でお会いした方などを含む約50名が参加しました。

 発表者はふくしまを訪れる中で感じたことや考えたことについてそれぞれの方法で発表しました。図を使いながら説明した発表や写真をたくさん取り入れた発表もありましたし、中には気持ちが高ぶったように声を詰まらせながら発表した学生もいました。

 これらの発表はとりわけ二つの重要な論点を含んでいたように思います。それは問題にかかわる人びとの複層的な声の存在と、ツアーを通しての「じぶんの立場」の問い直し、という二点です。

 一つ目は問題にかかわる人びとの複層的な声の存在です。今回のツアー参加者はさまざまな立場や境遇にいる方々から話を聞く機会に恵まれました。発表者の一人はこの問題における「みえる被災」と「みえない被災」、「みえる復興」と「みえない復興」の存在を語りました。また別の発表者は原発事故で被害を被った方々と地震・津波で被害を被った方々に対する保障の差について指摘しました。発表者は、これらの状況の違いが原発問題をより複雑なものにしている、と指摘しました。

 もう一つの重要な指摘は「じぶんの立場」にかかわるものでした。発表者の多くはツアー参加後ふくしまに対してさらに関心を持ち、「じぶんごと」に近い形でふくしまの問題を捉えるようになったと語りました。ある発表者の語りが印象的でした。ある発表者はこれまでふくしまの問題を語ることについて、自身が直接的な被災経験をしていないため後ろめたさを持っていた、と言います。しかし現地で様々な方の語る姿を見るなかで、自身の見たことや感じたことについて胸を張って語っていきたい、と述べました。

 一人ひとりの心のこもった発表が終わった後も、参加者ひとりひとりの語りや想いを共有する時間が続いたのが印象的でした。今回のツアーは2泊3日という短い期間でした。しかしながらそれでも実際に現地に行くという経験を通じて、多くのことを感じ・考えたことが伝わってきました。今回の取り組みが今後も続いていってほしいと思いました。

 



 


(文章:冨安皓行)