| 開 催 日 |
2025年10月16日(木)13:30~15:00 |
| 開催方法 |
対面・オンライン |
| 参加者数 |
会場18名 リモート14名 |
2025年10月16日(木)13:30~15:00に,人間科学研究科ラーニングコモンズにて,川口ゆり先生による人間科学セミナー「認知科学からみるベビースキーマ」を開催しました。会場には18名,リモートでは14名の参加がありました。1時間のご講演のあと,多方面からの質疑が行われました。少人数でしたが,たいへん実りのある機会となりました。
ベビースキーマ(ドイツ語 Kindchenschema,英語 babyschema)は,オーストリア出身の動物行動学者Konrad Lorenz が1943年に提唱した概念です。広く突き出た額,丸い顔,顔の下半分にある大きな目といった視覚的特徴を持つ顔に対して,人間はかわいらしいと感じ養護行動をとる仕組みが生まれつき備わっているという仮説です。直感的に納得できるため,長い間信じられてきましたが,それが本当に生得的な仕組みなのか,種を超えた進化的裏づけがあるかなどについては,詳細な検討が行われていませんでした。
今回の川口先生の講演では,さまざまなサルを対象とした実験を通じて,ベビースキーマとして指摘されてきた刺激の特徴(要素)は必ずしも普遍的ではなく,ヒト以外の種では認められないこともあることが紹介されました。「存在しない」ことを証明するのは難しいのですが,今後は,人類史の検討(たとえば中世以前のヨーロッパにおける子どもの扱いなど)も含めて,人間の幼児に対する反応や「かわいい」と思う気持ちについて,思い込みを超えて科学的に研究していくことの重要性が示されました。
イギリスからの一時帰国中に講演していただいた川口先生,実りのある質疑の時間にご協力いただいた参加者の方々に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。