REPORT【学生プロジェクト】ドキュメンタリー映画作家 ピエール・ペロー特集上映会

2026/02/18(Wed) - 10:00
実施日 2026年2月8日(日) 9:30-12:30
参加者数 20名
実施内容
 ケベックのドキュメンタリー映画作家ピエール・ペローの特集上映会を行った。今回上映したのは、ペローによる「クードル島3部作」の最後の作品『リバー・スクーナー』(1968)および、彼と他の作品で共同監督も行ったミシェル・ブローの『沈黙の子供たち』(1963)である。大阪市北区の中崎町にあるPlanet+1に場所をお借りして本上映会を行った。
 『リバー・スクーナー』は、ケベックのセント・ローレンス河にあるクードル島における木造のスクーナー船をめぐるドキュメンタリーである。そこの共同体では古くから木造のスクーナー船の漁で生活してきた。また彼らは作った木造船で木材を陸地へと運び生計を立ててきた。しかし時代が進むなかで彼らの産業は斜陽となっていく。本作品は、木造船の制作、木造船による運搬とそこでの労働状況・ストライキ、そして最後に一つの木造船に火をつけ映画は締められる。このような木造船の「一生」の流れに沿ってクードル島に生きる小さな集団の現実が描かれる。しかしながらそれは一つの単線的な物語というよりは、彼らの私的な実情に関する発話が入り乱れ、話は多方向へと広がる。本作品は、ケベックで生きる人々の現実を外の視点から説明を与え、客観的に理解できるように描いているのではなく、我々(観客)にとって他者である人々の固有の文脈が、その内部において錯綜している在り様として描かれている。
 もう一つの作品ミシェル・ブローの短編作品『沈黙の子供たち』は、聴覚に障がいをもつ子供たちが治療を受ける様子を描いている。障がいの程度はそれぞれであり、それぞれの治療法が用いられ、その後の人生の歩み方が示唆的に描かれる。
 一般的な映画館において上映のかからない両作品をフィルムで観られる貴重な機会となった。

プロジェクトの考察

私がピエール・ペローの上映会を企画したのは、マイノリティとされる集団を映画はいかに描いてきたのか、その実践を具体的に観ることで知見を深めるきっかけにしたいと考えたからである。ピエール・ペローはまさに、忘却されてしまうケベック固有の記憶をいかにして呼び起こすのか、これを問題にした映画作家である。
 それが具体的にどう映画作品において現れるのかが見えたように思う。ペローの作品の主眼にあるのは、ケベックで生きる人々を理解することではない。その内部においては様々な人々がそれぞれ様々な事情を抱えているということ、その文脈が錯綜した在り様であると私は上映会を通して考えた。
 会の終わりに集計した感想を紹介する。『シネマ』というドゥルーズの著作のなかでペローの映画は引かれているが、彼が具体的に何を行いたいのかが少しわかったという思想的な意義を見出した感想があった。また「人々がカメラを気にせず好き勝手にケベックの人々が話す様に、映画に映る人々と映画作家との信頼関係が見えた」、という映画を撮るにあたっての作家と被写体の関係性をめぐる感想があった。さらに様々なテーマが錯綜する内容に「自分が活動のフィールドとしているNPOのことを思い出した」という参加者自身の経験と引きつける感想もあった。このように本作は、1960年代かつクードル島という遠い場所の現実を映しだしたものではあるが、現在の日本という場において鑑賞しても十分その映画の意義が見出せるということが感想からうかがえた。
 またPlanet+1の代表の方からは、このような上映会を行うことで普段来ない学生などが観客として訪れてくれたと、学生プロジェクトとして映画館を借りて上映会を行うことに肯定的な意見をいただいた。このような上映会がただ知見を深める機会となるだけでなく、学生を中心に新たに映画館に訪れるきかっけとなるということを改めて認識できた。

当日の様子1 当日の様子2

(文責:瀧口隆)