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第二回 人新世サロン「ひとつの惑星、多くの世界」


第二回 人新世サロン
「ひとつの惑星、多くの世界」

 

日時: 2019年7月5日(金) 14:00~17:30

場所: 大阪大学大学院 人間科学 研究科 (吹田キャンパス)
北館2階 ラーニングコモンズ
地図: https://www.hus.osaka-u.ac.jp/ja/access.html
主催: Ethnography Lab

 

問題提起
趣旨

人新世をめぐる地球システム科学の議論は、しばしば、ジオ・エンジニアリング(人為的な気候の操作)を含む、惑星レベルでの積極的な環境管理を提唱しています。そこでは、先進国の近代人を普遍化した「人間」による地球環境の管理というビジョンが提示されています。

一方、人文社会科学者はしばしば、このようなビジョンを人間社会の多様性を覆い隠すものだとして批判してきました。人類学者のArturo Escobarらは、中米の先住民運動であるサパティスタ運動の呼びかけに応じながら、いま求められているのは、均一化された惑星を普遍的な人間が管理することではなく、「多くの世界が調和するひとつの世界 (a world where many worlds fit - Zapatista Army of National Liberation, Fourth Declaration of the Lacandón Jungle)」を作ることだと主張しています。

一見、工学と人文学の学問的な対立に見えるこの対立は、持続可能な社会への移行をめぐる実践的な議論とパラレルになっているように見えます。地球システム科学者たちは、人新世の環境危機に対処するために、二酸化炭素をはじめとする物質循環を惑星レベルで管理する「地球システム・ガバナンス」の必要性を提起しています。一方で、ラディカルな環境運動の多くは経済活動のダウンサイジングとエネルギー消費の削減が気候変動の抑制に欠かせないと主張しています。経済の組織的な縮小(脱成長=degrowth)やローカライゼーションを主張するこうしたグループが想像するのは、現在のひとつのグローバル社会が終焉し、分散した多数のローカル社会へと移行する未来です。二酸化炭素排出の劇的な削減が不可避となっている現状では、このようなビジョンは急激に現実的な選択肢として浮上しつつあります。

このように、「ひとつの惑星」と「多くの世界」の関係は、学問的な問いであるとともに、持続可能な未来を構想する上で鍵となる問題でもあります。人新世の環境と現実に即した人文社会科学の構築を目指す人新世サロンの第2回の会合では、このように多面的な意味を持つ「ひとつの惑星と多くの世界」の問題に対して、人文社会科学者がどのように関わっていけるのかを考えます。

 

時間割

14:00 挨拶と導入「ひとつの惑星と多くの世界?」 森田敦郎(大阪大学)
14:30 「有限な地球と無際限の世界:地球哲学のための研究計画」 田辺明生(東京大学)
15:00 上記二つについてのQ&A
15:30 休憩
16:00 ラウンドテーブル・ディスカッション
17:30 終了

 

Anthropocene Salon(人新世サロン)とは?

気候変動、海洋の酸性化、生物種の大量絶滅など、産業化と経済成長にともなう地球環境の変化は、現在急速な勢いで進んでいます。Anthropocene (人新世)は、この全面的な環境変化を象徴するキーワードです。

これによれば、人間の文明を育んだ完新世の地球システムは気候変動と大量絶滅などによって完全に変化し、現在人新世のシステムへと移行しつつあるといわれます。そこでは、人間の生存を支える地球環境は大きく変化し、社会と経済に破局的な影響を与える可能性があるとされます。この変化は、人間と自然の関係を根本的に変化させるとともに、社会のあり方にも大きなインパクトを与えつつあります。そのため、自然科学だけでなく、人文社会科学の側からの取り組みも求められています。人新世サロンでは、こうした課題に応えるために、気候から文化に至る多様な問いを学際的な観点から自由に論じていきます。