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コンフリクトの人文学セミナー第98回のご案内

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コンフリクトの人文学セミナー第98回のご案内

講演タイトル: 北東アフリカのアテケル=クラスターにおける紛争と平和構築―トゥルカナ地域に注目して―
講師: ケネディ・ムクトゥ博士
京都大学ASAFAS・客員教授、アメリカ国際大学-アフリカ・准教授

日時: 2015年6月23日(火)17:30~19:30
場所: 大阪大学人間科学研究科東館106教室(吹田キャンパス)
予約不要・参加無料/英語講演・通訳なし

趣旨:
北東アフリカのケニア、ウガンダ、南スーダンおよびエチオピアの4か国国境地帯は、アフリカ大陸のなかでも、もっとも国家への包摂度が低い辺境の地であり、武力紛争が頻発する地域である。この地域の主要住民は、「アテケル=クラスター」と総称される牧畜民(農牧民)で、言語=歴史的に近縁である諸民族集団から構成されている。このクラスターに含まれるのは、トゥルカナ人(ケニア北西部)、トポサ人とジエ人(南スーダン南東部)、マセニコ人とボコラ人(カリモジョン人)、ジエ人、ドドス人(ウガンダ北東部)、ニャンガトム人(エチオピア南西部と南スーダン南東部)である。この地域には、ほかにディディンガ人、イク人、ダサネッチ(メリル)人などが居住している。アテケル=クラスターでは、相異なるがしばしば互いに関係する多くの紛争が生じている。この地域では、長い間、牧草地と水場をめぐる掠奪と戦いが行われてきたが、過去40年以上の間に、近代的な武器の流入によって、こうした争いは致命的な軍事衝突や家畜の掠奪へと変容し、家畜を盗んだ小集団は、現金を得るため、それらをすばやくブラックマーケットで売るようになった。家畜掠奪は商業的な性質を帯びるようになり、エリート層の権力者との関係も疑われている。コミュニティと国家治安部隊との紛争は、政府が高圧的に和平と武装解除を進めようとした結果である。近年、石油と天然ガスの発見、自然保護、難民キャンプ、地方分権化といった政治と統治の変化により、情勢は新たな局面を迎えている。ローカルなレベルで、資源をコントロールしようとする競争が生まれ、政治的かつエスニックな緊張が高まっている。これらの紛争に対処するアプローチには、国家が主導する武装解除やパトロール、敵対するコミュニティをまとめるため市民社会がコミュニティや地方行政と協力して行うさまざまな平和構築活動、代替となる生計戦略による戦士と若い女性に対するエンパワーメントなどがある。本発表は、15年におよぶアテケル=クラスターにおける継続中の調査研究にもとづき、多層的な紛争と平和に向けて試みられている戦略を分析する。

講師プロフィール:
ケネディ・ムクトゥ・アガデ。京都大学ASAFAS「平和と安全保障」客員教授、アメリカ国際大学-アフリカ(ナイロビ)「国際関係、平和、安全保障」准教授。最近4年間は、東アフリカ、オープン・ソサエティ・イニシアティブの基金に基づき、ケニア政治研究所とアメリカ国際大学-アフリカの共同による暴力予防トレーニング主任を務める。東アフリカ、リフトバレー北部で調査を行い、紛争、性差による紛争の影響、国家安全保障、平和構築といった問題に関する研究を進めてきた。近年は、ケニアの牧畜地域での石油発見による新たな影響や、地方自治の拡大がもたらす安全保障の重要性について調査を行っている。おもな業績は、『銃と統治:北東アフリカ、リフトバレーにおける牧畜民の紛争と小火器』(2008, James Currey, Oxford)、「ケニア、トゥルカナにおける『統治されない空間』と石油発見」(The Round Table :a quarterly review of the politics of the British Empire 103(5) Oct 2014,pp. 497-515)、「ケニア警察予備隊の変化と難題:トゥルカナ郡の事例」(AfricanStudies Review 58(1) April 2015, pp. 199-222)

お問い合わせ先:
大阪大学大学院人間科学研究科 人類学研究室
Tel: 06-6879-8085(火~金)
E-mail: anthro@hus.osaka-u.ac.jp
交通アクセスは、 https://www.hus.osaka-u.ac.jp/ja/access.html をご参照ください。