IMPACT・オープンプロジェクトのとりくみ

Ethnography Lab

大学院向け授業を継続して実施し、その内容に基づく一般向けの教育プログラムを大阪大学フォーサイト(本学の100%子会社)に提供、同社の主催によって実施した。

デザインとエスノグラフィ、人類学の知見を融合して持続可能性の問題を考える「DIY エネルギー人類学」プロジェクトを(株)ロフトワークと実施し、建築、住宅、デザイン、エネルギーなどの企業関係者と交流した。

京都工芸繊維大学とデザイン、建築、人類学の方法論の融合をめぐる共同研究を継続して実施。そのプロジェクトの中で、バンコクとニューヨークから来日した建築学研究者と共同セミナーを実施したほか、ロフトワーク、URと共同でフィールドワーク、講演会等を開催した。

Ethnography Lab における授業化の流れ

災害ボランティアラボ

■大阪大学共創DAYにブースを出展 7月8日(土)、吹田市のエキスポシティ内で開催された大阪大学主催の「共創DAY」において、「防災まち歩き」と「災害食の展示」を実施した。また、災害ボランティアによる「被災地のリレー」をテーマに展示パネルで研究報告も行った。

■シンポジウムの開催 9月2日(土)、11月11日(土)、1月20日(土)の日程で 日本災害救援ボランティアネットワーク(NVNAD)と共催で、西宮市民会館にて連続のシンポジウムを開催した。テーマはそれぞれ「地区防災計画」「災害食とSDGs」「被災地のリレー」で、阪神・淡路大震災以降の災害支援活動での教訓を、広く市民に伝える目的で開催した。 2025年2月まで計8回実施予定。

■防災パーク@そねちか 11月25日(土)・26日(日)2日間、大阪梅田の地下街にて 南海トラフ地震や高潮災害をテーマに、防災ウォークラリーや災害食の展示、避難所の体験や停電時の避難体験など、防災啓発のための様々なプログラムを実施した。

■よりそい隊を通じて防災ウォーキング 11月26日(日)吹田市の五月が丘地区にて、地元の福祉委員会や吹田市社会福祉協議会等との共催で、認知症予防のアプリを活用した「防災まち歩き」を実施した。

■人科内備蓄の目的で、折り畳み式のヘルメット(おさめっと)や非常食(えいようかん)を試験的に購入した。ヘルメットに関しては、能登半島地震での支援活動において実際に活用した。

心理・行動フォーサイトラボ PBL-F

5月に第3期メンバーを募集して,人間科学部3年生からD2生,そして社会人(第1期生)までバリエーション豊かな10名でPBL活動を実施した。6月の第1回ワークショップでは,心理学を社会に活かすというラボ活動の目的を共有した上で,社会問題解決のための企画・コンセプトを作り込んでいくプロセスのフレームワークを体験的に学んだ。その後は3つのグループに分かれて,「めんどくさい対策」「難易度の高い認知課題・リテラシーの獲得」「効果的な掲示・Notification」という,共通点を持ちつつ異なる目標を目指す3つの社会課題に取り組んだ。各課題で概念整理・仮説設定を行って調査を計画し,8月と11月にもステイクホルダーである鉄道会社からの参加も得たワークショップで経過共有・意見交換を重ねながら,1月に一般市民対象のWeb調査を実施した.そして3月にIMPACT活動推進支援経費の助成を受けて報告会を実施し,各課題の調査結果について報告・議論を行った。

Behavioral foresight PJ 2023

子どもの安全ラボ

2020年5~6月に大阪大学未来基金「クラウドファンディング基金」寄付金募集実施プロジェクトとして資金を集めた子どもの安全啓発本について完成を目指し最終作業中である。

また大阪府立豊中高等学校能勢分校において実施してきた自転車安全教育 (https://www.town.nose.osaka.jp/soshiki/soumuka/seisakusuishin/oshirase/7652.html) について、その効果を測定するためのルーブリック作成の可能性を探ってきたが、学校教諭らとの議論の結果、纏まった知見を得るには至らなかった。この他、以下のような、子どもの事故防止のための啓発・実践活動を進めている。

■委員・講演・研修等 ・京都府教育庁 学校安全教室指導者講習会 講師 ・奈良県交通安全母の会連合会指導者研修会 講師 ・大阪大学医学部保健学科「学校保健学」 ゲストスピーカー ・大阪市ファミリーサポートセンター援助会員養成講座 講師 ・大阪府福祉部子ども家庭局主催保育者研修 講師 ・教育保育施設における送迎バス安全管理研修(兵庫県、奈良県、滋賀県) 講師

■教材等監修 ・NHK大阪製作動画「知ってる?こどものキケン」アドバイザー ・ナブテスコ株式会社主催「自動ドア安全教室」イベント企画アドバイザー ・2022年度に大阪書籍印刷と開発したカードゲーム「デンジャラZOO」を2024年度の商品化に向け監修

■メディア出演 ・NHK大阪ぐるっと関西おひるまえ出演 7歳の交通事故、子どもの誤嚥事故について ・NHKニュースウォッチ9出演 河川の安全について ・日経新聞、NHK大阪取材対応

子どもの安全ラボ\u3000活動報告

老いと死の研究ラボ

今年度は、若者と高齢者の交流事業として、伊丹市において「おいとも」を実施した。また、学術交流として2023年 6月 21日 Bar-Ilan UniversityのEhud Bodner教授、2023年 7月 26日The University of Edinburghの Alexander Weiss教授、2024年1月17日北京師範大学のWei LIU 准教授、を招き、それぞれエイジズム、性格と長寿、テクノロジーに関する講演会を開催した。

また、研究交流の拡大を目指し、国立台湾大学および京丹後市を訪問した。

インパクトの活動の外ではあるが、人間科学研究科と共催で第17回日本応用老年学会を開催した。その懇親会で車いすを使った立体ディスプレイを用いた演劇を上演し好評を得た。

老いと死の研究ラボ\u3000ー幸福長寿研究会ー

緒方らぼ

5月2日朝霧湖マラソンで出展とお手伝い

7月8日がいなんよ大学 in のむら 第12講を実施

9月17日がいなんよ大学 in のむら 第13講を実施

11月12日がいなんよ大学 in のむら 第14講を実施。

11月28日29日 乙亥大相撲のお手伝い

24年1月20日 第8回地域教育実践南予ブロック集会に参加し学生が中心となって「地域内外の若者が共創する防災教育―大学生伴走者が見た西予市と久慈市における高校生の交流から―」というテーマで発表を行った。

24年1月29日 OOS協定シンポジウムにNEOのむらの愛媛大学社会共創学部と野村地域自治振興協議会が参加し、能登半島の酒蔵復興支援の「青い酒募金」を行った。

24年3月17日 がいなんよ大学 in のむら 第15講を実施

24年3月23日 大阪モノレール株式会社と共催でお花見列車を運行し、復興支援酒「緒方洪庵」を提供した。 西予市地域貢献研究事業に応募し、「被災地における若者の体験伝承意識に関する比較研究」という研究テーマで採択され、その研究成果は、研究成果報告書にまとめた。

取組活動

哲学の実験オープンラボ

2023年度は、ラボ公認プロジェクトとして8つのプロジェクト(ラカンと現代社会研究会、マイクロアグレッション関連読書会、マルクス主義的社会理論研究会、現代思想におけるハイデガー研究会、美的近代研究プロジェクト、人類学基礎勉強会、RadioPiXOL、ジジェク研究会)が実施された。昨年度より2件増えた。

またラボ公式イベントとしては4件が行われた(「松本卓也 講演会:生き延びの誕生――垂直から水平へ」「シンポジウム:思想と精神分析」「岩田慶治:「京都学派およびポスト京都学派」という文脈において」「京都学派およびポスト京都学派と科学哲学・技術哲学の現在」)。さらに企業との連携としてインターンシップ1件(株式会社レイ・クリエーション)が実施された。

特にラボ公式ラジオ放送Radio PiXOL「テツガクシャの御用聞き」は「テツガクへの期待篇」(全9回)として、哲学を学ぶ社会人サークル活動をしている方たちを多数ゲストにお招きし、お話を聞くことができた。

取組活動

地域の食とプラネタリーヘルス

本プロジェクトは、地域に根ざした食の探究を通じて、人と環境の双方の「健康」を目指す「プラネタリーヘルス」の実践にむけた学びと発信を行うことを目的に、2022年度より活動を開始した。「地域の食」を探求するうえで、調査地としたのは瀬戸内地域である。瀬戸内地域は、その自然豊かな景観をもつ一方、高度経済成長期の工場誘致の加速によって工業地帯周辺で環境汚染が深刻化した歴史もあり、環境保全の観点から、日本で初めての国立公園に指定された地域でもある。そして、近年では芸術祭などのイベントも取り入れながら、観光による地域創生が活発になされている。

今年度は瀬戸内地域の3か所(岡山県玉野市、香川県直島町、広島県周防大島町)への共創フィールドワークを実施した。共創フィールドワークは、地域の人々(本プロジェクトでは、食に関わる団体や市民)とともに探求し、学びあう形で行われた。

■ フィールドワーク参加学生数:11人

■ 協力団体 ・岡山県玉野市観光協会 ・一般社団法人瀬戸内RE・SORT ・一般社団法人全日本伝統文化後継者育成支援協会 ・一般社団法人デスティネーションせとうち

■ 国際イベント 「ヒマラヤと瀬戸内から考えるプラネタリーヘルス」 日時:2024年1月16日 13:00~16:00 場所:国立民族学博物館 第3セミナー室 参加者:インド・ラダック地域のNPOジュレーラダックから4名が来日、研究者(中国、インドネシアなど含む)16名、学生・留学生、一般参加合わせて27人

■ アウトプット ジャーナル『未来共創』11号において報告を出版予定

地域の食とプラネタリーヘルス

全国人間科学系部局の連携と活動継続化

全国人間科学系部局連携ネットワークの参加大学による全体会議を3回開催し、年次活動について検討した。 実施した活動は以下の3件である。

1) 会報『人間科学』創刊号の発行 2023年12月に25ページ、カラー版pdfにて刊行し、参加大学に配布し、あわせてウェブ公開した。

2) ウェブサイトの作成と公開 ネットワークの公式ウェブサイトを作成した(年度末に公開予定)。

3) 第2回フォーラム人間科学(年次総会)の開催 2023年12月2日にオンラインで開催した。第1部「人間科学の最前線」、第2部「人間科学とは何か」では4件の研究報告がなされ、一般参加を含めた約100名の参加者があった。その後、第3部として参加大学による年次総会を開催した。

縮退社会ラボ

本オープンプロジェクトは、現代社会を成長発展社会と捉えるのではなく、少子高齢過疎化など縮退を余儀なくされている社会〜縮退社会〜と捉え、「尊厳ある縮退」をキーワードとして、縮退社会におけるコミュニティの変容過程、および、住民や社会の縮退に対する受容過程を検討し、尊厳ある縮退を実現するための実践的方略を導出する。尊厳ある縮退同好会を拠点として、先行研究を基にした概念整理、事例収集、過疎地、および、都市部の人口減少地域へのフィールドワーク、人口シミュレーションなどを実施してきた。

プロジェクト代表者の村田忠彦は現在、JST未来社会創造事業デジタル社会実験プロジェクトにおいて、京都府八幡市、新潟県加茂市を対象としたデジタル社会実験の構築を行なっており、2023年度は両市の市職員と会合を重ね、人口減少に直面する自治体のニーズ把握を行ってきた。JSTのプロジェクトでの研究成果を日本国内の他の地域に展開するために、縮退社会ラボの枠組みで検討を重ねている。

オープンプロジェクト研究会 第1回:『アイスブレイクミーティング』  全参加者(人間科学研究科、サイバーメディアセンター)  2023年7月13日(オンライン)

第2回:『リアルスケール社会シミュレーションの可能性』  村田忠彦(サイバーメディアセンター・情報科学研究科)  2023年8月30日(サイバーメディアセンター・1Fコモンズ)

第3回:『「尊厳ある死」をめぐる言説構造とその罠』安藤泰至(鳥取大学医学部)  2023年10月19日(人間科学部本館42教室)  共催:尊厳ある縮退同好会

第4回:『JST未来社会創造事業における自治体ヒアリング結果』  村田忠彦(サイバーメディアセンター・情報科学研究科)  2024年3月 現地ワークショップ(WS) 京都府八幡市  2023年4月6日 課題洗い出しWS(15人)  2023年6月1日 課題解決アイデア検討WS(15人)  2023年7月10日 市内視察(17人)  2023年12月4日 新市長への報告と今後の進め方(8人) 新潟県加茂市  2023年6月29日 健康ポイント事業に関するWS(23人)  2023年8月31日 ワークショップ結果報告会(22人)  2023年12月21日 課題抽出に関するWS(22人)

災間社会ラボ

2019年、2021年と続けて水害に見舞われた佐賀県武雄市において、2019年の水害後に活動をはじめた「一般社団法人おもやい」の活動への参与観察を通じて、災間社会における市民協働のあり方について調査を行った。

今年度は、現地訪問を行い、おもやいにかかわる人々に集まってもらって、日ごろの活動の中で感じていることを短文の「独り言」として表現し、共有する取り組みを行った。また、2023年12月12日には、人間科学研究科にて、おもやいのスタッフ2人をゲストに、MeWプロジェクトと共催で、「災間の被災地の市民協働を考えるセミナー」を開催し、災間社会において「生活困窮」にあるような方々をどう支えるか、またそれを「支援」ではなく、ご近所どうしの「たすけあい」として、支えあっていくとはどのようなことなのかについて、具体例を交えながら紹介いただき、議論を深めた。

災間社会ラボ(2023年活動概要)

みんなのフィールドエソロジーラボ

動物、動物の管理者、研究者、学生、一般来園者が、野猿公苑と動物園をフィールドとして、比較行動学に基づいた交流を行うことを目指している。目標はフィールドでそれぞれが「新しい役割」で他者と接することにあり、「教えながら学ぶ」は本プロジェクトの一つの柱である。以下のイベントにおいて、一般市民を対象に「ニホンザルの行動」と「行動観察法」の紹介を学部生や大学院生が行った。

① 7月22-23日に科学技術館で開催された「博物ふぇすてぃばる!9」にて、大学院生が行動観察法の紹介を行った。395名の訪問者に「行動観察のしおり」を配布した。 ② 10月7-8日に京都市勧業館みやこめっせで開催された「いきもにあ2023」にて、大学院生が行動観察体験を提供した。270名の訪問者があった。 ③ 11月18-19日に大阪市立自然史博物館で開催された「大阪自然史フェスティバル2023」にて、大学院生が行動観察体験を提供した。300名の訪問者があった。 ④ 2月17日「研究成果発表会 2024~淡路ザル観察公苑 & 大阪大学 人間科学部~」を開催し、フィールドワークによって書き上げた卒業論文の成果を、野猿公苑の管理者、ボランティア、来園者の方々)にフィードバックするオンライン報告会を開催した。視聴回数は968回、ユニーク視聴者数は564名、約200名の参加者が1時間の報告会に最後まで参加した。

一般市民、高校生、大学院生、研究者を、研究フィールドに招き、野生ニホンザルの観察会を開催した。 ⑤ 7月10日に淡路島モンキーセンター(兵庫県洲本市)で観察会を行った。一般市民と大学院生と野猿公苑管理者の交流を通して、野猿公苑の未来について意見交換を行った。25名が参加した。 ⑥ 7月26日に神庭の滝自然公園(岡山県真庭市)に岡山県立岡山一宮高等学校の1年生を招き、大学院生と一緒にニホンザルの生態を解説し、糞と食痕探しを行った。74名の参加があった。 ⑦ 9月4日に淡路島モンキーセンターで観察会を行った。④の観察会がすぐに定員に達してしまったため、イベントに参加できなかった一般市民を対象とした追加開催だった。個体識別体験や研究者が行っている認知実験を行い、解説を行った。27名の参加があった。

岡山県立勝山高等学校の1-2年生を対象に、大学院生がニホンザルの行動と社会、そして行動観察法を教える講習会を3度開催し、ニホンザルの観察に必要な知識を高校生に伝えた。 その後、真庭市立勝山小学校の児童をフィールドに招き、事前学習した高校生がサルの観察法を小学生に教える観察会を開催した。 ⑧ 8月2日に岡山県立勝山高等学校の2年生を対象に、大学院生が「ニホンザルの社会」と「行動観察法」について事前学習となる講義を行った。9名の参加があった。 ⑨ 12月28日に岡山県立勝山高等学校の1-2年生を神庭の滝自然公園に招き、「ニホンザルの糞と食痕探し」の観察会を行った。25名の参加があった。、 ⑩ 12月28日に岡山県立勝山高等学校において、1-2年生を対象として「行動観察法」と「ニホンザルの毛づくろいと利他行動」「ニホンザルの管理」について、事前学習となる講義を行った。25名の参加があった。 ⑪ 1月15日にオンラインにて岡山県立勝山高等学校の1-2年生を対象に、「行動観察法」に関する事前学習を大学院生が実施した。12名の参加があった。 ⑫ 1月23日に神庭の滝自然公園にて、観察会を実施した。事前学習を積んできた岡山県立勝山高等学校の1-2年生が、真庭市立勝山小学校の3年生を対象に、「ニホンザルの毛づくろいと社会」「ニホンザルの管理」について解説を行い、小学生と一緒に定量的な行動観察を行った。74名の参加があった。

本企画には共育の視点の実践(真庭市総合教育大綱)という以下の3つのねらいがあった。 【協育】教えながら学ぶ:小学生に高校生が教える。高校生に大学院生が教える。 【郷育】郷土の誇りである神庭の滝とサルを知ってもらう:滝の職員さんが一生懸命に神庭のサルの管理をされていることを学ぶ。地域に暮らすサルのことを知って、昔から続いてきたサルと人間の共生を考える。 【響育】サルには1頭1頭異なる個性があることを知り、サルとヒトの共通点と相違点を理解して、人間について理解を深める:「大人って何だろう?」「親ってなんだろう?」「人間はなぜ社会を作ってくらしているのだろう?」。

行動観察を通じて野生動物とヒトの共生を目指す取り組みが、朝日新聞EduAに掲載された。

2023年度 みんなのフィールドエソロジーラボ 活動概要

記憶の継承を祈念するグローバル・ダイアログ

終わりの見えないウクライナ侵攻とその後の混迷が続く昨今、常に戦いの犠牲となるのは、日常を生きる市井の人々であることを改めて思い知ることになった。戦後70数年を経て風化が進むこれらアジア・太平洋戦争を巡る体験と記憶は、戦争体験者の直接的な証言が聞き取れなくなる「ポスト体験時代」へ突入しつつある今日、未来世代への継承が喫緊の課題となっており、また人々が暮らしの中で直面してきた現実を、「戦後日本」だけに留まらず、東アジア全体が経験してきた歴史の文脈の中に位置付け、今日への連続性を問い直してゆくことにも目を向ける必要性が浮かびあがる。

 そこで、これまで研究代表者らが2007年より主宰してきた10数年にわたる東アジアにおける国境を越えた学術交流の実績を糧としながら、今年度、「記憶の継承を祈念するグローバル・ダイアログ」(記憶の継承ラボ)を新たに立ち上げた。このラボでは特に次世代を担う学生たちの主体性に期待しながら、長崎、沖縄、福島、水俣など各地において日々平和活動に尽力されている現場の人々との交流活動を通じて、アジア地域史の視座から戦争・戦後体験の意味を問い、未来への展望を描いていくために、国境を越えた対話(グローバル・ダイアログ)と連帯への可能性を生活の次元から模索することを目指している。

記憶の継承を祈念するグローバル・ダイアログ(記憶の継承ラボ)

プロジェクトSOUP

「プロジェクトSOUP」は、人間科学研究科の学生に部局内外での多文化交流の場を提供することで、学内での学びと社会を繋ぐPublic Sociology (公共社会学)の実現を目指しています。

本年度は、プロジェクトメンバーが自分たちとは異なる視点を持つ人々と実際に対話する機会を持つことで、多文化共生社会の課題を考えることを目標としました。人科留学生も積極的に参加しています。具体的には、下記の5つの企画を開催しました。

①人科生交流企画:人科1回生から博士後期課程の学生が毎月1回集い、映画鑑賞や学生生活についての意見交換をしています。 ②地域高齢者との世代間交流企画@吹田市:グローバルビレッジ津雲台の高齢者住宅で毎月1回開催している、人科生と高齢者との交流企画です。 ③地域高齢者との世代間交流企画@浜松市:2024年2月9日に漁師町の高齢者との交流企画を開催しました。 ④地域住民との世代間交流企画@伊丹市:2023年9月10日に幅広い年齢の地域の方々と交流企画を開催しました。 ⑤地域住民との国際交流企画:岸辺にある高齢者住宅で毎月1回英会話教室を開催しています。

プロジェクトSOUP

Tsunami DRR

大阪府危機管理課の委託で本プロジェクトチーム(花木伸行社会経済研究所教授、 CiDER大竹文雄 特任教授、 佐々木周作 特任准教授)で津波予測区域に住む府民に災害意識と防災備えの状況を調査した。有効回答数13885人の調査結果を東北大開催2023年巨大津波研究集会とサンフランシスコ開催アメリカ地球物理大会で発表し、専門家から助言を受けた。さらに能登半島地震における調査支援を実施。

2024年12月インドネシアのバンダアチェで開催されるインド洋津波20周年記念計画について国連人道問題調整事務所OCHAインドネシア事務所と協議。浪速区にある安政津波記念碑を模して建設された2004年インド洋津波メモリアルポール85本のリノベーションや防災教育を計画に入れ、大阪大学として20周年式典とユネスコ津波シンポジウムで発表予定。

以上の計画を2024年2月28日『府民のための国際津波防災シンポジウム』にて国連OCHAが発表し、さらに南海トラフ以外にも大阪府民が気を付けるべき能登半島の教訓と大阪湾断層帯の津波のリスクを専門家からご教示いただき、府民も交えて府下の津波防災について議論。R6は府下自治体と阪大生が講義で行動経済学ナッジを使った減災の取り組みを行う予定。インドネシアとさらに共働して行く。

Report of Tsunami Disaster Risk Reduction Lab. in 2023

対話で進めるディスアビリティ・インクルージョン

本プロジェクトの目的は、共生の基盤となる対話の機会を設けることにあった。今年度は、言語文化的特性や障害によって生じる多様性との接点を創出することを目指し、①ことばの能力に関するシンポジウム(1回)、②障害者の方々が作るパンを販売するDE&Iカフェ(2回)、③障害者支援に取り組む実践家とのランチトーク(1回)、④視覚言語である手話やそれによって育まれるろう文化に触れる手話カフェ(3回)を行った。また、⑤として、俳人であり障害者支援に従事する障害者と詩人として地域創生に関わる実業家とともに障害や芸術を通して人の生を考える合作俳句会(1回)を3月15日に行った。まず、シンポジウムでは教育や研究に携わる方々だけではなく、高校生を含めた学生さんの参加もあり、様々な立場から捉えたことばと対話の様相を共有することで、共生に求められる対話とは何かを議論することができた。

次に、DE&Iカフェでは、パンという食を通して、障害者・非障害者がともに従事する社会活動に参加することとその普遍性についての気づきを促すことができたのではないかと考えている。また、DE&Iカフェでは、障害者支援に携わる実践家によるランチトークを開催し、実践家としての思いや現場の課題などを知る場を設けた。ランチトークの際は、上記のパンに加えて、登壇者が携わる障害者就労支援の一環として生産されているチョコレートの販売も行った。実践家と話し合う場は、障害の有無を乗り超えた社会創出の意義や関わり方について、より具体性を持って考える機会となった。一方で、3回実施した手話カフェでは、障害当事者と直接コミュニケーションをとることで、障害を概念だけで理解するのではなく、聴覚障害者の言語である手話やろう文化についても学べる環境を作ることができた。手話講師の方が音声に頼らず視覚によって世界を捉え、コミュニケーションを取ることを体験する場を提供してくださったが、今後もこの手話カフェを定期的に開催することで、学生主体のサークルなどへの発展と定着化を期待しているところである。

令和5年度「対話で進めるディスアビリティ・インクルージョン」報告

多様性の中のウェルビーイング

職場・働き方の多様性とウェルビーイングについて考える一般向けのイベント、「多様性の中のウェルビーイング-芸術・雇用・社会」を2024年3月20日(水・祝)に大阪大学中之島センター10階佐治敬三メモリアルホールにて開催した。

本イベントの準備段階では、国際障害者センタービッグアイのほか、重度心身障害者施設に赴き、障害者の方が作業療法士や理学療法士の方とともに絵画を描いていく過程を視察した。また、障害者アートの専門家や、画家として活躍する方から、作品の芸術としての価値や、アートを介した障害者雇用の現状についてレクチャーを複数回にわたって受けた。

イベントでは、絵画の展示とダンサーによるパフォーマンスをライブで鑑賞した後、芸術と障害者雇用、職場や働き方の多様性とウェルビーイングについて、未来共創センターと他部局、外部団体との連携のもとに議論する機会を設けた。

取組活動

復興まちづくりラボー野田村

復興まちづくりラボ

1. コミュニティラーニングの開講  8月19日から27日まで野田村において「コミュニティラーニング」を開講した。

2. 野田学の展開  大阪大学大学院人間科学研究科教員2名が講義を行った。

3. 大阪大学への”短期留学“  野田村職員4名が1月30日に大阪大学人間科学研究科を訪問しコミュニティラーニングを振り返りに関する集会を開催した。

4. 能登半島地震に関する情報提供  3月11日東日本大震災13年となる行事の中で、能登半島地震の現状を報告し、ラボとしての活動を打ち合わせた。

取組活動 野田村でのこれまでの活動例

生野区における多文化まちづくり活動における社学共創プロジェクト

大阪市生野区における多文化共生、少子高齢化などのさまざまな課題に取り組むために、大阪大学と地域が協働するプラットフォーム「いくのふらっとだいがく」を活用し、大阪大学の大学院生・修了生と地域住民の交流を促進するための未来共生セミナー、COデザインセンター開講科目「マイノリティ・セミナー」受講生による生野コリアタウンまちあるき、水俣のひとびとの暮らしを歌う柏木敏治さんを招いた「猪飼野ちいさな音楽祭」を開催し、文化創造という点から生野と複数地域を横断する文化イベントを実施した。生野区のみならず、上記の活動に参加した受講生が、同様の課題をかかえる西成区・釜ヶ崎の住民と交流を重ねながら、マイノリティの表現のもつ豊かさを発信するための文化イベント、「カマとクィアのキケンな関係」と「カマボール2024」の企画と実施に参画し、分断されがちな属性や集団をこえて、社会で協働するための文化実験をおこなった。

グローバルビレッジ・コミュニティ・プロジェクト(GCP)

・GCP会議、GV津雲台まちづくり協議会の会議

・グローバルビレッジ津雲台のオープン3周年記念イベント 「第3回おもろい学(あそ)び場グローバルビレッジフェス」を開催した。日時:11月19日。グローバルビレッジ津雲台の各テナント、大阪大学関係者、留学生をはじめ子どもからお年寄りまで、幅広い世代に喜んでいただけるイベントの数々で、大盛況のうちに楽しい時間を共有した。

・人間科学研究科共生学系の実験実習1のフィールドとしてGVを活用。上記のフェスなどにもスタッフとして参加した。

・「グローバルビレッジ津雲台食事交流イベント」参加者各人がお国自慢の食べ物を持ち寄り、パーティーを行った。 開催日時:2023年10月7日(土)場所:グローバルビレッジ津雲台 コミュニティースペース

・大阪大学のインカレサークル「いなせもん」による、よさこいダンスイベント 開催日時:2023年7月2日(日)場所:グローバルビレッジ津雲台 広場

取組活動

MeWプロジェクト(月経をめぐるウェルビーイングの研究と実践)

①ディスペンサーの普及に係る実証研究 下記について、D&Iセンターの協力を得て実施した。 ・大阪大学内の全学MeWディスペンサーのMap化 ・デジタル技術を用いた大学内モニタリングの仕組みづくり構築(生理用品の常備体制強化) ・学内ユーザーのオンラインアンケート ・D&Iセンターの取組みについての聞き取り

②産学連携の推進 ・ディスペンサーの製造および販売の体制構築、OOS協定の締結 ・ディスペンサーのイベント用への改良の議論 ・グッドデザイン賞への申請

③大阪万博へのディスペンサー導入の検討 ・大阪大学万博推進室との連携、協働 ・万博協会、各パビリオン関係者との協議 ・万博プレイベントへの参加2回、万博でのプレゼン機会の獲得 ・ロータリークラブでのプレゼン2回

④避難所への運用の検討および実践 ・7月および12月に月経x防災のワークショップ開催 ・能登半島地震避難所へのディスペンサー設置

⑤国際女性デーにあわせた国際シンポジウムの開催(3月9日実施)