REPORT【学生プロジェクト】人科50周年記念学生プロジェクト 参加型アート「結ぶ、繋ぐ、結いなおす」

2023/12/06(Fri) - 08:00
実施日時 2023年7月29日(土) 13:00(12:40受付開始)-17:00
※ 2023年6月15日から7月14日の間でメッセージを募集
実施場所 インターナショナル・カフェ(人間科学研究科本館1階)
参加者数 学生メンバー2名、外部講師1名、同窓会生・在学生・教職員21名(計25名)
企画者 田邉 匠、澁谷 純子、FU YUE、YUN YAJING、YANG HANYI

本企画の目的

 本プロジェクトでは、参加型アートへの参加および制作を通して、人間科学部/研究科(以下、人科)に縁がある者(在学生および卒業生、教職員等)が相互に交流し、記念碑を作り上げる機会を提供する。本プロジェクトを通して、卒業後に疎遠になってしまった卒業生と在学生・教職員の縁を結びなおす。そして、アート制作を通じて国籍・言語・文化を越えて、在学生同士や、在学生・教職員と卒業生同士を新しく結び、繋げていくことを目的とする。
 また常時、作品を展示し、訪れた人々がアート制作に参加できる永遠の未完とすることで、これからの人科を全員で創造していくという意味を込めた。人科生を迎え、送り出す存在として愛されるような、そして在籍した証を残すことで卒業後も人科に思いを馳せることができるような新しいシンボルとなることを目指した。

当日のタイムテーブル

12:40 受付開始
13:00-13:10 研究科長の渥美公秀 先生からのご挨拶
13:10-13:40 人科創立50周年記念事業委員長の篠原一光 先生による銘板披露
13:40-14:00 休憩
14:00-14:30 本プロジェクトの報告
14:30-15:00 外部講師の川島茂雄 様との座談会
15:00-17:00 参加型アートの実施
17:00 解散

実施内容

 本プロジェクトは、昨年度に採択・実施された「人科50周年記念学生プロジェクト」の続きである。昨年度は、真竹と人科棟前に生育している孟宗竹を活用し、「人」の文字を模したオブジェを制作した。新しく「学生プロジェクト」として採択された今年度は、プロジェクトの区切りとして、これまでの道のりや作品に込めた願い・展望を広く知っていただくための報告会・座談会と、竹のオブジェに色とりどりの毛糸を結んでいく参加型アートを主目的とした最終イベントを実施した。なお、イベントは、学生プロジェクトを進行役として、同窓会事務局ならびに人科創立50周年記念事業委員会との共同で開催され、その関連から研究科長の渥美公秀 先生からのご挨拶および人科創立50周年記念事業委員長の篠原一光 先生からの銘板披露も行われた。

 本プロジェクトの報告では、企画のアイディアが形成される過程で参考にした、人科と竹の関係性や人科棟の形に付与された思いといった話題から始まり、本作の意図、2月のイベントの様子、そして今後の展望を発表した。また、外部講師の川島茂雄 様(竹工芸作家)からは、本作のモデルとしている「OPAMの輪」などの竹かご編みを応用した作品と参加型アートについて語っていただき、参加者が本作への理解を深める機会となった。このように参加者に作品の成り立ちを知っていただいた後、オブジェに毛糸を結ぶ参加型アートを実施した。本プロジェクトでは、参加型アートへの関与について「呼びかけ」「アート作成」「常設展示」の3段階を想定していた。「呼びかけ」段階では、様々なコミュニティのつながり、たとえば、在学生から研究室の卒業生に連絡をとることを通して、Googleフォームにメッセージを送っていただく。その後、コミュニティごとに毛糸の色を指定し、収集した情報をもとに、コミュニティ間で連絡を取り合えた数から結ぶ毛糸の数を算出した。また、送られたメッセージは短冊にして、オブジェに飾った。イベントでは、「呼びかけ」段階で算出した毛糸と短冊に加えてイベント用の毛糸を、在学生および同窓生、教職員とともに、オブジェに結んだ。

プロジェクトの考察

 昨年度のイベント後に作品を展示し、さまざまな媒体を通じて情報を発信していたため、学内における認知度は高まってきた。イベント前のメッセージ募集期間およびイベント当日では、在学生や同窓生、教職員の方から協力を得ることができ、イベント当日は猛暑の中、遠方から駆けつけていただいた方もいらっしゃった。本プロジェクトの報告会では、さまざまな世代が入り混じる中、人科生という共通の話題で互いの交流を図ったことで、作品の企画意図をより鮮明に伝えることができたと分析する。川島様との座談会も報告会との関連を意識したものを事前に依頼していたため、参加者にとっても参加型アートを深く学び、本作への向き合い方や表現を考える契機になった。実際、最後の参加型アートでは、参加者間で談笑が生まれ、また制作を行うなかで、作品の今後を話し合う機会に恵まれたことは、人科の輪を形成する一歩になったのではないかと考える。発足当初、最終イベントは学生プロジェクト単体で行う予定であったが、こちら側の提案で、50周年記念事業委員会の銘板披露と共同で開催する運びとなり、次年度にまたがったものの、記念事業の一環として節目を迎えることができたことは幸甚であった。
 本プロジェクトは、創立50周年という新たな出発点に、これからの人科を、現在・未来における人科の構成員とともに創造していくための提案である。そのため、私たちが蒔いた種が、どのように芽吹くかは、数年後・十年後の人科に委ねられるだろう。作品の材料となった孟宗竹は、しっかりとした根を張り、遠い場所でも株を出し、枯れても種を残し新しい株をつくるそうだ。歴史と伝統から学び、成長と再生を繰り返しながら、未来を切り開いていくことができる人科となることを切に願う。
 最後に、附属未来共創センターの杉本先生、川渕様を始め、同窓会事務局や50周年記念事業委員会、教務・会計係の皆様には、温かいお言葉や特別なご支援をいただき、また、同窓会の皆様からは、オブジェの制作費として追加のご支援をいただいた。心より御礼申し上げる。そして、プロジェクト開始からこれまで指導してくださった川島様に深く感謝申し上げる。

(文責:田邉 匠)