科学研究費補助金・基盤研究(B)「『集合意識』から『情動の社会学』へ─デュルケーム社会学の現代的展開」(22H00904)では、2024年3月11日・13日に、社会学者エヴァ・イルーズ氏(ヘブライ大学、社会科学高等研究院EHESS)をお迎えし、近代社会と感情について考える連続セミナーを開催しました。第2回(3月13日(水)14:30~17:00、大阪大学中之島センター8階 大・中会議室)のテーマは、「感情・親密性・資本主義-愛の終焉とエモディティ(感情商品)」でした。
イルーズ氏のご講演では、現代の資本主義において感情が果たす役割-とりわけインターネットと私たち自身の関係において-とは何かということが考察されました。ティンダーを事例に取り上げ、感情、マッチング・アプリ、資本主義市場の間の相互関係を解きほぐすことを通して、私たちの最も深い部分-欲望や内に秘められた感情-がどのようにデジタル化され、資本へと変容するのかが検討されました。現在、人々の恋愛や性においてマッチング・アプリの果たす役割は大きくなっていますが、それが何であり、どのような社会的帰結を導くのかについては、これまでにまだ十分に検討がなされていません。その点、感情の商品化と資本主義的主体の構成、感情のオンライン・エコノミーに関する研究に言及しながら、ティンダーと感情生活のテクノ・エモディティ化について批判的な分析を展開したご講演は、非常に有意義かつ刺激的なものであったと思います。
コメンテーターを務めた山田からは、1)エモディティと真正性、2)スコピック資本主義社会におけるエモディティと身体、3)エモディティと社会インフラ、4)エモディティと愛、という4つの観点からの質問とコメントをしました。イルーズ氏から明瞭なリプライをいただき、エモディティについてより深く理解することができました。
大・中会議室が満席になる盛況であり、日本の研究者・一般の方からの注目の高さが伺えました。日本の皆さんとイルーズ氏を囲んで議論できる機会に恵まれたことを嬉しく思います。
本科研プロジェクトのウェブサイトもご参照ください。https://avecdurkheim.com/symposium.html
2024/05/27(Mon) - 08:00